伝統産業ガイドブック 2023年3月発行
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工 細い絹糸や金糸を編んで織り上げる日本の伝統工芸品である組紐には、丸台、角台、高台など様々な組台が用いられます。 3代目・大野佳昭氏の意志を引き継ぎ、4代目・裕介氏とともに活動している工房ちぐさならではの技術は、縦糸と横糸を交えて組み上げる綾竹台。古典柄を基にした斬新なデザインなど、由緒ある作品を数多く手掛けています。川 江戸時代初期の武士の生業だった組紐。中期以降は一般庶民に普及し、次第に華美、精巧なものが好まれましたが、幕府の奢侈禁止令により、「わび」「さび」気風が生まれ、地味目で精緻なものへと発展していきます。大正5年に、初代・川勝新三が東京都で創業。二代力之介、三代新市へと、その高度な技術は脈々と受け継がれ、組紐固有工具「高台」を使いこなす数少ない組紐師として、海外でも実演販売を行うほど高名。江戸文化らしい、渋さと気品に溢れています。所岩槻区加倉2-21-1<マップC214> ☎048-757-1720営9:30〜17:00/日曜・祝日定休中 明治の中頃、江戸組紐技術を継承する大和巌氏に師事、江戸文化を色濃く残す組紐の技術を今に伝えたのが初代の中川正三郎氏。2代目の中川正男氏が組紐づくり特有の工具「三段式の高台」を操れる数少ない組紐師のひとりで、その高名な伝統技術は現在、3代目正明氏へと受け継がれています。東京都伝統工芸品にも指定され、世界各国から賞賛を浴びる現在でも、奢ることなく、静かに淡々と「わび」「さび」の江戸の神髄を今に伝えています。所大宮区高鼻町2-235<マップB213>☎048-641-1671田 現在、主に着物の帯じめなどに用いられている組紐。その美しさをいっそう際だたせているのが、紐の両端に付けられる房です。この「水より房」の歴史は組紐そのものの歴史より新しく、大正末から昭和初期頃にかけて関西を中心に広められました。数千本という糸を一本一本、すべて手作業で縒り合わせて、やっと一本が完成します。研ぎ澄まされた集中力と技術力を要する「水より房」づくりは、一家ごとに、師伝継承されています。横 江戸初期、武具の需要が高まるとともに、組紐は武士の生業として盛んに生産されました。後に江戸から移り住んだ職人によって技が伝えられ、岩槻は組紐の生産供給地になりました。木製の組紐器台で正絹糸を合糸し、糸巻き木玉で糸を複雑に交差させてゆく伝統技法には、緻密な計算と経験を要します。大正時代に創業して以来、その師伝技術をもとに、現在も様々な組紐を生産しています。深 組紐の発祥は、その全盛期・江戸時代よりも遙か昔に遡ります。古墳時代の遺品にあるように、組紐は甲冑・刀剣・馬具などに関わるものでした。奈良時代以降は、箱・額・楽器など付随して用いられ、正倉院・法隆寺などに残されています。現在は、帯じめ・羽織紐など和装にはかかすことのできないものとなっています。無形文化財(人間国宝)・五嶋敏太郎氏に師事、その緻密な技術を習得。日本固有の貴重な文化を継承する、重要な役割を担っています。所岩槻区本町1-14-4<マップD118>☎048-758-0249所岩槻区本町4-8-3<マップD117>☎048-756-0165鈴 剣道具は江戸時代中期、直心影流の長沼四郎左衛門国郷が開発し、またたく間に多くの流派に波及したと伝えられています。 昭和10年、小学校を卒業後すぐ川越の中富弘武堂で剣道具作りに携わった鈴木謙伸は、戦後の昭和28年に別所沼近くで鈴木剣道具店を開業。戦前からの製法と伝統を守りながら、現在は剣道具専門として、三代目・崇敏が採寸から縫いつけ、組み立てにいたるまで、すべて手作業で作り続けられています。所在地所営業時間工房や作業場の見学ができます。営● 伝統的な工芸技術を継承する事業所○※マップ番号は、巻末p25・p26を ご覧下さい。かわかつくみひもたぐちくみひもこうぎょうふかいくみひもこうげいすずきけんどうぐてん所岩槻区大字釣上665<マップC315>☎048-798-6361所浦和区高砂4-20-2<マップA319> ☎048-862-4528営9:00〜19:00(日・祝は17:00まで)/月曜定休●組紐㈲川勝組紐店●組紐田口組紐工業●組紐深井組紐工芸●剣道具鈴木剣道具店こうぼうちぐさなかがわくみひもこうげいよこつかひもこうげいきくやがっきてん所岩槻区本町3-5-26<マップD116> ☎048-756-0313営9:00〜17:00/土・日曜・祝定休所浦和区常盤2-8-8リュミエール常盤1F-B<マップA320>☎048-822-5779要予約に限り、工房や作業場の見学ができます。お土産品・商品の購入ができます。●組紐工房ちぐさ●組紐㈲中川組紐工芸●組紐横塚紐工芸●琴、三味線㈲喜久屋楽器店14勝組紐口組紐工業井組紐工芸木剣道具店房ちぐさ川組紐工芸久屋楽器店喜 昭和22年創業。室町時代末期に誕生したといわれる三味線。創業当時は、花柳界の発達により三味線の需要は多かったといいます。その後、花柳界の衰退により客は長唄・端唄の先生やお弟子さんが中心となりましたが、近年は学校からの需要も増加しています。江戸時代からの変わらぬ工程を、1ヶ月から長いもので半年くらいの時間をかけ、ひとつひとつ丁寧に全て手作業で完成させています。塚紐工芸

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